経営理念やパーパスの浸透よりも重要なこと
「変化の時代に企業が生き残るためには、経営理念やパーパス(企業の存在意義)の浸透が大切である」多くの企業がこの論調をもとに、理念浸透やパーパス経営の取組みを進めています。もちろんそれ自体を否定するつもりはありませんが、激化するグローバル競争の中で企業が生き残るためには、理念浸透やパーパス経営よりも「経営戦略の浸透」に取組む必要があるのです。
そもそも両者にはどのような違いがあるのでしょうか。
経営理念・パーパス: 「社会の課題を解決する」「人々の暮らしを豊かにする」といった抽象的な目標です。これらは企業の方向性として正しいものですが、現場の社員には漠然として感じられることが多いです。
経営戦略: 「グローバル化」「デジタル化」「付加価値向上」など、より具体的な方向性を示します。場合によっては「事業の選択と集中」や「構造改革」など、社員にとっては痛みや抵抗を伴うこともあります。
このように経営理念やパーパスは抽象度が高い一方で、経営戦略は具体的な方向性を備えたものになります。
いまの日本企業に必要なのはどちらか?
例えば、500万人が携わる自動車業界は、激しいグローバル競争の中で速やかにEVにシフトしていく必要があります。またIT、小売、電気等の多くの業界ではGAFAやASEANの新興企業に負けない競争力を備えるために事業構造を変えていく必要があります。
こうした大変革を乗り切る上では、現場で働く社員が、速やかに具体的な行動を起こしていく必要があり、その具体的な行動を起こすためには、抽象度の高い経営理念やパーパスよりも、具体性のある経営戦略をしっかりと浸透させ、社員一人ひとりが明確な目的や方向性のもって、自分が何をしなければならないかを考える必要があるのです。
これまで「経営戦略の浸透」というと、課題として認識はあるものの、解決の優先度は決して高くはありませんでした。しかし「経営戦略の浸透」は日本企業再生の鍵を握る重要な取組みであり、今すぐにでも取組むべき重要なテーマとなっているのです。
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