働き方が抱える大きな矛盾
いま「働き方」というものが大きな矛盾を抱えています。
まず今の企業の状況ですが、変革を迫られている多くの日本企業にとって、何とか改革を実現させ、新たな事業やイノベーションを生み出し、この大変厳しい変化の時代を乗り切らなければならない状況にあります。
そして、そのような状況下で、変革の成否のカギを握る最も重要な要素が社員の働き方なのです。
全ての社員が会社が目指す一つのベクトルに向けて一致団結し、誰もが当事者意識を持って知恵とアイデアを出し合いながら、激しい変化を乗り切りきることが求められているのです。
一方の、政治や社会が求めている働き方というのどうでしょう。
「どんなに頑張っても今の会社で報われることはない」
「大企業でも簡単に倒産する時代において、自分もいつどうなるか分からない」
「24時間働き続けることは過去の話、これからは自分を時間を大切にするべき」
このような背景の中でワークライフバランスや副業の推進、独立や転職の促進など多様な働き方や生き方を進めているのです。
どちらも違和感なく今の時代を反映した考え方として、当たり前のように聞こえる話です。
そして、働きすぎることによる過労死や自殺など決してあってはならないことでしょう。
しかし、この一見当たり前のように聞こえる二つの働き方は実は大きな矛盾を抱えています。
つまり、政治や社会が求める個人の多様な働き方を認めると、受け手である労働者側にとっては自分が勤めている会社に対する関心は薄れ、会社の方針や戦略など自分事にせず、あくまで他人事となります。
そして、取敢えずもらえる給料は貰っておこうと、言われたことだけはしっかりとこなすだけになり「自分の生活が守られればそれで良い」といった自分最適な働き方を促進させるのです。そして、いざ会社の先行きに不安を感じれば、会社を辞めれば済むということになります。
現在、必死に変革に取組んでいる経営者は社員に対して主体的な行動やイノベーションなどを求めていますが、そういった変革に求められる働き方が根底から崩れてしまうのです。
企業を取り巻く環境が激しく変わる中で、政治や社会が求める働き方と企業が求める働き方を両立させることはとても難しく、どちらかを犠牲にしない限り両立は困難です。このような中で、今の働き方改革のようにムリに両方の働き方を両立しようとすれば会社も社員も共倒れし、どちらも不幸になる可能性があるということなのです。
そして、そのような中で真に求められる働き方改革というのは、社員一人ひとりが
「今の会社の中で給料を上げるにはどうすればいいのか、稼ぐためには自分がどういう働き方に変えなければいけないのか」そういったことを考えることが必要なのです。そして、そのことが生産性向上につながっていくのです。