「組織風土改革」はやってはいけない!?
昨今、大手企業を中心に行われている改革の一つに組織風土改革というのがあります。
経営者から見ると、「うちの社員は指示を出さなければ動かない」「自ら考え自律的に動こうとしない」といったように社員の意識に問題があるのではと考え、また部門間に関しては「部門間が協力し合わず、対立関係にある」「自部門のことだけしか考えていない」など、組織全体が何か悪しき風土が蔓延しているように感じているのです。
そして、それが原因で経営計画が思うように進まない、あるいは業績にも影響しているといったようなことで何かしらの対策の中に組織風土改革を進めるケースが多いのです。
組織風土改革に当たっては、社員の主体性を高めることを狙いとした、自己啓発セミナーや研修の実施、管理職に対するコーチング研修などが盛んです。また部門間に関しては、クロスファンクショナルによって課題解決チームを組成したり、コミュニケーションの場を設定するなどしながら、相互の交流を促進させ、組織の活性化を図ろうとしたりします。
ところが、多くのケースを見ていると、一時的には盛り上がりを見せるものの、時間が経つと元に戻ってしまい、効果は持続しないケースがほとんどなのです。
なぜこういった改革の取組みは上手くいかないのでしょうか?
問題の対象となっている社員や部門に所属している方々の話を聞くことがありますが、そこから分かるのは、大抵は「誰も自分自身の主体性がない」もしくは「自部門のことしか考えていない」と思っている人はいないということなのです。そして彼ら自身は「自分自身あるいは自部門の役割をしっかりやっている」ということを主張しています。そして、その役割の内容や実際の業務に関して、その実態を聞く限りは、特に違和感もなく、当たり前のことを当たり前にこなしていると理解できます。もちろん本人たちに、周りから言われているような悪気は一切感じられません。
これは一体どういうことなのでしょうか?
実は、双方の間にあるのは、組織風土や意識の問題などではなく、全く違う別の問題があることが分かります。それが、双方が考えていることの中には「優先すべき課題や目標のズレ」があるということです。
なぜ経営者が「主体性がない」と言っているかを深く掘り下げていくと、そこには「本来取り組んで欲しい目標があるのに動いてくれない」「優先して取り組むべき課題があるのに解決しようとしていない」というのが根底の理由としてあります。その一方で、そういった評価をされている対象者側にとってみれば「自分は自分がやるべき課題をやっている」と考えているのです。ここから見えてくるのが、お互いが優先している課題や目標に関してズレが生じていて、それを修正し合っていないということなのです。
多くの企業で起きている、組織内に蔓延る諸問題というのは、実は、それぞれの社員や部門が「今やるべきことは何か」といった課題や目標の優先付けそのものの目線合わせを行っていないがために起きてしまっていることに根本問題があったのであり、組織風土や体質自体の問題ではなかったのです。そして、この優先すべき課題や目標のズレを互いが直さない限りは、いくら前述の風土改革を行っても根本の解決には至らないということなのです。