明確な方向性のもとで現場力は生きてくる
近年、現場力の向上を課題とする企業が増加しています。かつて、日本の成長の原動力は企業の現場力にありましたが、現在では「指示がなければ動かない」「言われたことしかやらない」という現場の風潮が課題として浮上しています。
多くの経営者は「自分が若い頃は、上からの指示がなくても自分たちで判断して行動していた」と述べ、それが現場力であり、会社の強さであったと語ります。
しかし、ここで注意すべき点は、かつての高度成長期と現在の市場成熟期とでは、現場力を活かすための前提条件が変わっているということです。バブル以前の右肩上がりの時代では、事業モデルはシンプルで、作って売るという単純な構造でした。そのため、経営が細かく指示を出さずとも、現場が自ら判断し行動することが効率的かつ効果的でした。
一方、現在では、顧客ターゲットに合わせた商品やサービスの多様化、グローバル化やIT化の進展により事業モデルは複雑化しています。そのため、より効率的に利益を上げるためには、事業の選択と集中を戦略的に進める必要があります。
このような環境下では、現場が自分たちで考え行動するためには、まず方向性や戦略を明確に理解していることが前提となります。その前提がないまま「自分たちで考えろ!」と言っても、現場は混乱するだけであり、逆効果となりかねません。
現場力は非常に重要です。しかし、その前提として経営の方向性を明確に伝え、その範囲内で「具体的なことは現場が自分たちで決める」ことを促進しなければなりません。